祭りのない村はない -人力飛行機Advent Calendar2020-

人力飛行機Advent Calendar 2020に思いつきで手を挙げてしまったのでちょっと書いてみようと思う。

 

実はこの話は、その昔、2009年の鳥人間コンテストがなくなったときに作られたSNSにも書いた話の焼き直しである。

当時、kazuhitoさんにいい話だと褒めてもらったので改めて書いてみたい。

 

現役時代(2006-2008年)の僕とWASA

僕は飛行機が作れない。

機械的な知識のバックグラウンドもなければ、手先も不器用で、一年の時にやったリブ作りの練習では結局一本も仕上げられずに終わった。

(当時はCNCなんて、ほとんどチームで未導入で全て手削り。そして今も作れるわけがない)

だから2年生でチームを引き継いだ時には、みんなが飛行機作りに集中できるように、それ以外の仕事を全部引き受ける思いもあってチーフ(WASAでのチーム代表の役職)についた。

 

WASAは古くからあるチームであるが残念ながら昔も今も決して強いチームとは言えない。

ただ、鳥人間コンテストにはでているので飛行機完成にはたどり着いていた。

しかし、そこには製作スケジュールが遅れ過酷な環境での製作が続くことで辿り着いていたよつにも思う。

全員のモチベーションもボロボロになっていたようにも記憶している。死屍累々な現場も目の当たりにした。

淡々と飛行機を作るだけの製作期間。それは日が短く寒い季節にも重なり、なかなか気の滅入る時期である。死屍累々も当然の帰結のようにも思う。

そこで思い出したのは中高の公民の授業で聞いた『ハレ』と『ケ』であった。

 

ハレとケ

ハレとケという言葉をご存知だろうか?

僕は中高の公民の授業で聞いた。しかし、ほとんどそれ以来使ったことも聞いたこともない。耳には残っていた。

ハレとケについてWikipediaの上っ面を要約すると以下のようなことである。

ハレはいわゆる晴れの日、晴れの舞台と言うような、非日常や年中行事を表す。

一方、ケはハレの反対で普段の生活、日常を表す。

 

では、人力飛行機チームにおいてハレとケとはなんだろう?

ケは飛行機製作の毎日だと思う。

人生の中では稀有な経験である人力飛行機製作でも、ただひたすら完成に向けて飛行機製作を黙々と続けることはケである。ケになってしまっている。

ハレはわかりやすいもので有れば鳥人間コンテストだろう。

これを晴れの舞台といわずしてなんであろうか。(飛び降りるのだから、清水の舞台かもしれないが)

しかし、一年で鳥人間コンテストだけがハレの日でいいのだろうか?

残りの364日をケの日にして精神はもたないだろう。

 

人力飛行機チームのような組織(に限った話ではないと思うが)にとってハレとケは大事

ハレとケの12年前のWASA鳥人間の実践例

当時のWASAでの実践例

ハレとケは精神衛生を保つための先人からの知恵である。

ハレとケのバランス改善について、WASAが昔からやっていたことと、僕が積極的にやったことを紹介したい。

一つ目は、昔からやっていたことだが、『班横断のイベント幹事専門部隊』の設置である。

こう書くと、『はいはい、早稲田のイベサー乙』と突っ込まれそうだが(まあ他の大学に比べればそうかもしれないが)、僕は非常に大切なことだと思っている。

彼らは製作班の枠を超えて任命されたチームだった。

新歓コンパや卒業パーティーは勿論だが、鳥人間コンテストでの移動や食事の手配、スキー合宿などの準備を一手に引き受けてくれた部隊である。多い時は100人近い飲み会なども彼らの差配で執り行われたように記憶している。(早稲田のイベサー乙)

 

彼らが企画してくれたイベントのおかげで、みんなひと息つけて気分転換が出来ていたのではないかと思っている。(決して飲みニケーションを押し付けるオッサンになってしまったとは思いたくないが…)

 

もう一つは季節感を取り入れることである。

これは僕の趣味でやっていたことだ。

年の瀬にはしめ縄を買って作業場に置いたり、試験飛行の風見には5月は鯉のぼりを、7月には笹を使ったりした。

12月はフェアリングの中をくり抜いた部材でクリスマスツリーみたいなものを作ってくれとフェアリング班にお願いをした。(クリスマス爆発しろと言いながら)

 

こんなことをやっていると『製作作業も手伝わずに、また遊んでやがる』と陰口も叩かれていただろうが、申し訳ないが僕は大真面目に取り組んでいた。

 

なぜなら、年中行事を取り入れることは『ハレ』を追加することで、鳥コン本番までを『ケ』だけにしないためである。

 

こういったアイディアは公民の教科書のハレとケの説明に書いてあった。

お祭りなどの非日常を取り入れることでコミュニティの維持を計ると。

イメージでしかないが、寒村でも昔ながらお祭りは担い手不足ながらも続けている。

そこで、僕はタイトルの考えに至った。

寒村でもお祭りをやってるのではなく、お祭りをやらない村が滅んだだけではないかと。

それが『祭りのない村はない』のではないかと。

 

こういった思考のもと、ハレとケを大事にしたいと考えが至り現役時代の動きにつながった。

当時のチームメイトには今更ながらこの場で釈明をするので、理解してくれればと思う。

 

黙々と飛行機を作るのはやめよう

このご時世、思うように活動も出来ず、特に時間のない学生チームのみんなは辛い思いをしていることと思う。

こんな時でも、なにか、お祭りを見つけて、コミュニティを延命させ、どこのチームも活動を続けて欲しいと願っている。

鳥人間は人生の夏休みの自由研究そのもの。思いついたことは試せばいい。

それは、機体のことだけではない、組織運営にだって当てはまる。

 

僕の学生鳥人間への思いはこのツイートで表現している。

 

ここまでおっさんのダラダラとした自分語りに付き合ってくれてありがとうございました。

また琵琶湖で集える日を願っています。